千葉大学災害治療学研究所

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千葉大学災害治療学研究所 所長 三木 隆司 教授

未来を動かす「災害治療学」
―災害と向き合い続ける社会を作る―

インタビュー動画(5分版)

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教員紹介

三木教授

千葉大学災害治療学研究所 所長
三木 隆司 教授

災害治療学研究所所長。災害治療学研究所では、健康をターゲットとする医・薬・看護学系、先端計測・AI技術等により災害研究を進める理学・工学系、植生等から頑健な国づくりを進める園芸学系、災害による社会変革を防ぐ社会学系の研究者が結集し、学際的に災害治療学研究を進める学術基盤を構築し、社会実装を見据えた研究を行っていく。

インタビュー内容

清水先生

清水
(インタビュアー)

三木先生、本日はどうぞよろしくお願いいたします。

三木教授

三木教授

よろしくお願いいたします。

清水先生

清水

本日は、災害治療学研究所の概要についてお伺いできればと思っております。
千葉県における災害といえば記憶に新しいのが、2019年に直撃した台風15号・19号ですよね。あの日は千葉大学病院も本当に大変な状況で、私は夏休み初日だったんですが、出勤したことを覚えております。

これから日本で大きな地震が発生することも危惧されておりまして、国民全体の災害に対する関心は非常に強いと思います。
そのような中で、災害治療学研究所はどのような研究をされるのか、どういったミッションを持っているのかを、お伺いできればと思っております。

台風15号の被害状況(出典:千葉市HP 台風15号の被害状況(出典:千葉市HP)
三木教授

三木教授

はい、ありがとうございます。
千葉大学の災害治療学研究所が対象としている災害というのは、先ほどお話があったような台風だけではありません。火山の噴火、地震、風水害など、自然災害も様々です。
さらに、2020年からは新型コロナウイルス感染症が世界で流行しておりますが、このようなパンデミック下で自然災害が起こるという、複合災害にも備えなければなりません。

清水先生

清水

確かに、感染症が流行っている時にもし自然災害が起こったら、集団での避難生活が今まで通りにできなくなったりしますよね。

三木教授

三木教授

そうです。様々な自然災害や複合災害に平時から備え、そして起こった後にはしなやかに復旧できるような社会づくりを目指すというのが、研究所のミッションだというふうに考えております。

清水先生

清水

ありがとうございます。
災害が起こる前に予測して被害を最小限に抑え、起きた後には柔軟に対応して、いち早く復興していける社会づくり。災害発生直後だけではなくて、平時から「予測」「対策」「復興」と、長いスパンで災害を見て研究をされていくということですね。

三木教授

三木教授

そうですね。災害の対応というと、災害発生直後に怪我を治療するような救命活動をイメージされると思いますが、実は災害が起こった後にしばらく経ってからも、ストレスや環境の変化によって様々な健康被害が起こります。しかもそのような健康被害は、災害発生直後よりもはるかに規模として大きく、長く続くということがわかってきました。
こういった移行期・慢性期の健康被害について、今のうちから病態の解明と対策を進めたいと考えております。

研究
清水先生

清水

災害発生後、数週間くらいの出来事は、メディアでも報道されやすいので、皆さんイメージがわきやすいと思います。しかし、確かに私も医療現場を見ていると、数か月から数年経ってきてから、患者様が増えてくるなという印象です。この移行期・慢性期だからこそ起きる疾患というのもあったりするんでしょうか。

三木教授

三木教授

はい。2011年の東日本大震災の後、長期間避難を続ける方々を長く調査していきますと、普段であったら起こらないような変わったタイプの病気になったり、平時はそれほど問題にならないような病気が思った以上に悪くなってしまったりするケースがあることが明らかになってきました。
そういった疾患は報告できる症例が少なく、これまでは網羅的な研究が進んでいませんでした。

清水先生

清水

そうなんですね。移行期・慢性期に特有の疾患には、これまで通りの治療が効かないこともあるんですね。
災害にどう対応していくかを総合的に考えると、医学だけでは対処しきれない部分もあると思いますが、千葉大学災害治療学研究所はどのような組織になるのでしょうか。

三木教授

三木教授

例を挙げますと、千葉大学のリモートセンシング研究センターでは、人工衛星などを用いて地形の変化を正確に把握し、災害を予想するという研究が非常に進んでおります。

清水先生

清水

そうなんですね。

三木教授

三木教授

一方では、園芸学部の先生方は、災害が起こった後に津波で流されてしまったエリアに木や花を植えて、まちづくりをサポートするだけではなく、人々の心も復興させようという研究と活動をされてます。
こういった多方面の研究者がみんなで力を合わせて、全体として災害に強い国をつくっていきたいというのが我々の願いであります。

千葉大学災害治療学研究所組織図 千葉大学災害治療学研究所組織図
清水先生

清水

千葉大学災害治療学研究所は、全部で16部門もあるということで、本当に様々な分野の知を集結して、研究を進めていくということがよく分かりました。
ただ、ここまで大きな組織を動かして社会に貢献していくということは、千葉大学だけでは難しいことも多いのではないかと思います。
やはり行政・一般企業・一般市民の方々のように、産官学の全体を巻き込んでやっていく必要があるのかなとは思ったんですけども、その辺はいかがでしょうか。

三木教授

三木教授

実際に地域住民の方々の健康をどうやって守るのか。その地域を支える企業の方々が、どのようにアプローチしたらいいのか。自治体の方々はどう取り組んでいくべきか。地域全体が災害に強くなるためには、住民と企業と自治体が一緒になって、地域を育てていくという姿勢が絶対に必要です。我々が社会と連携し、学問的な面でサポートをしていきたいと考えております。

清水先生

清水

やはり研究をするだけではなくて、その社会実装まで見据えているんですね。
災害が起きる前からあらゆる事態を想定して、社会全体で災害に備えていくためには、研究を皆さんに知っていただくことも重要だと思います。
皆さんが災害だけでなくて、環境問題にも関心を持っていただけると嬉しいなと思っています。皆さんに分かる言葉で研究を啓発していくことも、災害治療学研究所のミッションの1つなんですね。

三木教授

三木教授

はい、そうなんです。皆様のご期待に応えられるよう頑張りますので、応援のほど、よろしくお願いいたします。

清水先生

清水

本日は本当に貴重なお話をいただきまして、ありがとうございました。

三木教授

三木教授

どうもありがとうございました。

三木教授
三木教授
三木教授
三木教授
三木教授
三木教授
三木教授
三木教授
清水先生

千葉大学未来医療教育研究機構 特任助教
インタビュアー:清水 啓介

未来医療教育研究機構特任助教。災害治療学研究所ではファンディング企画部で広報を担当。附属病院整形外科/痛みセンターでは、脳画像、心理学的見地から慢性疼痛の作用機序の解明及び治療を担当している。

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