研究概要

ヒストン修飾酵素であるポリコーム群(PcG)およびトライソラックス群(TrxG)複合体、DNAシトシンメチル基酸化酵素TETの機能解析を中心としたT細胞のエピゲノム研究に従事しております。免疫学は、基礎的な分子生物学と臨床医学を繋ぐ接点となる非常に大切かつ魅力的な研究分野です。

2023年に災害治療学研究所に着任した後には、(1)今までに取り組んできた免疫のエピゲノム研究とbioinformaticsツール開発をさらに発展させること、(2)災害発生後の慢性期に視点をおいた生活習慣病、感染症の対策に繋がる基礎研究をすること、(3)災害対策の観点から様々な研究者と異分野融合の研究を行い、新たなフィールドを開拓すること、を目標に活動しております。物理、化学、数学を駆使して、生命の謎に迫り最終的には疾患を制御することを目標に研究を進めています。

2025年4月現在、免疫研究チーム(主に大学院生)と災害研究チーム(主に医学部生)で活動しています。

ゲノムとエピゲノム(研究全体の概念図)

1. iPS-NKT細胞免疫療法のエピゲノム研究

iPS-NKT細胞免疫療法のエピゲノム研究

エピゲノムに関連する酵素群は、正常の免疫反応に非常に重要な役割を果たします。私達は遺伝子欠損マウスを用いて今までの研究で、PcGやTrxG、TETの欠損で起こる免疫異常について報告してきました。実はこれらの免疫異常が、状況によっては体に対して良い方向に働く場合があることが分かってきました。その例の1つが抗腫瘍免疫の活性化です。千葉大学病院で進められている、iPS細胞由来のNKT細胞を使った臨床治験に参画して、エピゲノム関連遺伝子操作を介した新しい抗腫瘍免疫療法の開発に取り組んでいます。

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2. 老化に伴って出現する異常な免疫細胞の機能解析

老化に伴って出現する異常な免疫細胞の機能解析

上記の1.と関連して、エピゲノムに関係する酵素を欠損すると、様々な異常が起こることが明らかとなりました。ヒトにおいては、TET2遺伝子の変異が、骨髄増殖性疾患や冠動脈疾患のリスクを上昇させることが知られています。その詳細なメカニズムは不明ですが、老化との関連も指摘され始めています。本研究テーマでは、老化とエピゲノム異常、疾患との関連についてマウスモデルやヒト臨床検体の用いた解析を行っています。

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3. エピゲノムのバイオインフォマティクス解析

次世代シークエンス技術の発展によりエピゲノム研究が大きく進展しました。次世代シークエンスの標準的な解析法を使って、研究を進めていくのはもちろんのこと、私達は独自に開発したツールや計算方法でエピゲノムの謎を解き明かしたいと考えています。特にエピゲノム修飾同士の空間的位置関係・相互作用に興味を持って研究に取り組んでいます。プログラミングやbioinformaticsを基礎から勉強したいという方や研究生も歓迎します。

エピゲノムのバイオインフォマティクス解析

4. ビッグデータの活用による災害医療への応用

老化に伴って出現する異常な免疫細胞の機能解析

災害医療への応用を目指して、気象データの解析に取り組んでいます。この過程で気づいたのは、エピゲノムデータや遺伝子発現データの解析とかなりの共通点があるということです。まだ始めたばかりのプロジェクトですが、省庁管轄の公開データをうまく活用しながら、気象データと健康データをリンクさせて、災害から命を守るための研究を実践してまいります。 千葉大学医学部生による機能別団員チームリーダーとして、千葉市消防団に加入したことを契機に、千葉市消防局と共同での災害関連のデータ解析にも取り組んでいます。

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5. 災害時に役立つポータブル医療機器の開発

災害時に役立つポータブル医療機器の開発

放射線医学研究所、福島県立医大、企業との共同研究により、災害時に役立つ医療機器の開発に取り組んでいます。目下のところ力を入れているのが、放射線災害や新興感染症に対応した次世代型医療コンテナの開発です。これは、現在東千葉メディカルセンターに設置されている医療コンテナに改良を加えることで実現を目指しています。 また総合大学である千葉大学の強みを生かして、工学部や理学部、環境リモートセンシング研究センターなどとの共同研究に取り組んでいます。

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千葉大学医学部・医学研究院 千葉大学災害治療学研究所

千葉大学大学院 医学薬学府 災害治療学
次世代災害治療学研究部門 小野寺研究室
〒260-8670 千葉県中央区亥鼻1丁目8-1

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メール a-onodera#faculty.chiba-u.jp
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